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健診で問題のなかった
子どもさんの目に関して
ご両親が気にかけておくポイント

健診で問題のなかった子どもさんの目に関してご両親が気にかけておくポイント

前回は、3歳児眼科健診(以降、3歳児健診)で見つかることが多い「弱視」についてご紹介しました。今回は、健診で問題のなかった場合について紹介します。

林 思音(はやししおん)

この記事の監修者

国立成育医療研究センター
林 思音(はやししおん)

1.健診で見つかりにくい病気にはどのようなものがありますか?

最近は、3歳児健診の中で、フォトスクリーナーというスクリーニング用の機器を用いる自治体が増えました。この機器は、弱視の原因となる屈折異常(遠視や乱視)や斜視を検出する大変優れた機器です。この機器を導入したおかげで、以前に比べて弱視(もしくは治療が必要な病気)の発見率が高くなったと、たくさんの自治体から報告されています。けれども、残念ながら病気を100%見つけてくれるわけではありません。見つかりにくい病気にはどのようなものがあるでしょうか?

一つ目が、斜視や屈折異常以外の目の病気です。例えば、白内障(目の中のレンズの役割をしている水晶体が白く濁る病気)や網膜(目の奥にある光を感じる膜、カメラで例えるとフィルムの働きをします)の疾患などです。こうした病気は、フォトスクリーナーでは見つけにくいですが、視力検査で見つかることが多いです。ですから、健診前にご家庭で行う視力検査はとても大切です。日本弱視斜視学会ホームページでは、「3歳児健診のご案内」で、視力検査方法を詳しく説明していますので、参考にしてみてください。

二つ目が、斜視の中でも時々現れるタイプの斜視(視線がそろわない状態)です。間欠性外斜視(眼の位置が、片方だけ外に向いてしまう斜視)のように眠かったり疲れていたりすると出やすいタイプや、視線の方向によって現れるタイプがあります。この場合、検査の時に斜視が現れていないと捉えることができません。このような斜視は、普段の子どもの様子をご存知の大人が気づいていることが多いため、健診前に記入する「問診票」の中で必ずチェックを入れましょう。

健診で見逃されやすい病気にはどのようなものがありますか?

2.眼科受診を考えたい症状

3歳児健診では問題がなくても、その後に目の症状に気がつくかも知れません。どのような症状が出現したら眼科を受診するとよいでしょうか?

目つき・目の動きがおかしい

目を細めてみたり、横目でものをみたりする場合、視力不良や眼振(目がけいれんしたように動いたり揺れたりすること)のサインのことがあります。また、目の動きが左右でそろっていない場合は斜視の可能性があります。

ひどくまぶしがる

たとえば、睫毛内反症(さかさまつげ)があり睫毛が角膜(いわゆる黒目)に接触して角膜表面が傷ついていると、強い光を嫌がることがあります。また、眼球内に何らかの炎症があったり、白内障、緑内障(眼圧が高いことにより視神経が傷んでくる病気)などがあってもまぶしく感じることがあります。
また、間欠性外斜視でも、明るい屋外で片目をつむり、まぶしそうな表情をすることがあります。

物に近づいて見る

視力不良の可能性があります。子どもの場合、目に異常がなくても、集中してテレビなどを見ようとすると近づいてしまうことがあります。視力不良がある場合には、遠ざけてもまたすぐに近づいたり、見えにくそうに目を細めたりするなどの症状を伴います。

黒目の中心が白っぽく見える

白内障、網膜芽細胞腫(網膜に発生する腫瘍)、網膜剥離などの疾患の可能性があります。

黒目の大きさが左右で違う

たとえば、子どもの頃に発症するタイプの緑内障では、風船を膨らませるように角膜や眼球が大きくなることがあります。逆に、生まれつき何らかの目の病気があって、片方の眼球が小さい場合もあります。

目が揺れる

目の何らかの疾患があると眼振を認めることがあります。

まぶたが下がっている

生後すぐからまぶたが下がっている場合は、先天眼瞼下垂の可能性があります。また、夕方になると下がったり、日によってまぶたの下がり方に差がある場合は、まぶたを動かす神経の病気などが考えられます。

親・兄弟姉妹に弱視・斜視、または生まれつきの目の病気の人がいる

子どもの目の病気の中には、遺伝が関係しているものがあります。


3歳児健診以降も、園での眼科健診、就学時健診など、目の健診の機会が何度かあります。こうした健診は、3歳児健診で見つからなかった目の病気を発見するための絶好のチャンスです。上述した症状が特になくても、積極的に参加しましょう。

眼科受診を考えたい症状

3.眼科受診のコツ

1) 眼科選びのポイント

多くの眼科のクリニックは、大人の診察だけでなく子どもの診察も受け入れています。もし、子どもを専門とする眼科について知りたい場合は、日本弱視斜視学会、日本小児眼科学会で紹介していますので、眼科選びの参考にしてみてください。
日本弱視斜視学会:https://www.jasa-web.jp/general/doctor-list
日本小児眼科学会:http://www.japo-web.jp

2) 写真や動画は診療の助けになります

眼科を受診する際、目つき・目の動きなど、気になる症状があらわれている時の写真や動画を、あらかじめスマートフォンで撮影しておくことをお勧めします。症状によっては診察の時間帯に現れにくかったり、お子さんの機嫌が悪くうまく診察ができないことがありますので、写真や動画は大変参考になります。

3) 眼科受診は余裕をもって

眼科の診察は、他の科に比べて時間がかかる傾向があります。なぜならば、眼科では診察の前後に視力検査など、時間のかかる検査をいくつか行うことが多いからです。散瞳薬(瞳を広げる点眼薬)を使用する検査では、点眼後、薬の効果が出現するまで30分程度待ちます。加えて、子どもの場合、屈折異常(遠視、近視、乱視など)を正確に測定するために調節麻痺薬を点眼し、点眼後約1時間待ってから検査を行うこともあります。初めて受診するなら、さらに待ち時間が長くなることも考えられます。
ですから、眼科受診は余裕をもって来院されることをお勧めします。また、待ち時間に遊べるよう、おもちゃや絵本などを持参されるとよいでしょう。

眼科受診のコツ
林 思音(はやししおん)

国立成育医療研究センター

林 思音(はやししおん)

国立成育医療研究センター 医員

HP:https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/doctor/kankaku-keitai/h02.html

略歴

2004年 山形大学医学部医学科卒業
2006年 山形大学医学部眼科医員
2010年 浜松医科大学眼科
2015年 山形大学大学院医学系研究科博士課程修了
2016年 山形大学医学部眼科助教
2021年 国立成育医療研究センター医員
現在に至る

専門分野:小児眼科学 斜視弱視学

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